
人生の休憩所で、本当の自分と出会う。
『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』
1月9日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
©TBS
監督・深澤慎也氏特別インタビュー

Profile
深澤慎也(撮影・音声・監督)
株式会社TBS ACT勤務 認定NPO法人チーム・ユニコン理事 動画制作チームTokyo Climb代表
2004年専門学校卒業後、約20年に渡り、主にTBSの連続ドラマ、報道特番のMAミキサーとして番組制作に携わる。
2018年西日本豪雨にて、所属するNPOの活動で災害支援を行った際に現地で活躍する「プロボノ」に興味を持つ
2020年、世界的なパンデミックで営業自粛を余儀なくされた山小屋を支援するため、本業の傍ら、動画制作チームTokyo Climbのプロボノ活動の一環として「山小屋動画」の制作を開始。現在は、東京からもアクセスしやすい八ヶ岳エリアの山小屋のPV動画を制作中。
映画のコンセプトと、
ストーリーを通して監督が伝えたいこととは
この映画は、山岳写真家の菊池哲男先生が、八ヶ岳の山小屋を旅するドキュメンタリー作品です。
先生の写真や私が撮影した空撮映像など、どれもその瞬間・その場所の“ベストコンディション”を切り取っており、ネイチャー映画としても楽しめます。
私が伝えたかったのは、まず「小屋番」という謎多き仕事を紐解くこと。
八ヶ岳がいつも魅力的でいられるのは、山小屋で働く人たちの努力があるからだということです。
例えば、「なぜ若い人がこんな大変な仕事をわざわざ選ぶのか」。鹿の食害や苔を守るための環境活動、子育てと山小屋の仕事を両立する若女将、登山者の安全を守る人たち——。
それと同時に、都会の生活の中で壁にぶつかる若者の悩みとか、子育ての大変さとか、そういう現代社会の問題も含めて、山を通して映し出せたかなと思っています。


映画制作へと発展した経緯は
もともと僕は「Tokyo Climb」という動画制作チームで、山や小屋番さんたちの素顔を撮り続けてきました。 それをTBSの山好きのプロデューサーが見てくれて、「これで映画の企画を出さないか」と声をかけてくれたのが始まりでした。
映画の撮影自体は2024年3月から2025年の正月まで行いましたが、Tokyo Climbで撮りためてきた映像も使用しているので、実質3年分くらいの映像が詰まった作品です。
また、Tokyo Climbの活動を通じて築いた、八ヶ岳観光協会様(八ヶ岳の山小屋加盟)との信頼関係があったからこそ、映画の実現につながりました。
この映画は、TBSドキュメンタリー映画祭2025で初上映され、 大きな反響をいただきました。2026年1月9日(金)から公開の劇場版は、その作品に四季折々の新しい映像やインタビューを加えて再編集したものになります。

撮影中の忘れられないエピソードは
冬の天狗岳の爆風はすごかったですね、一生忘れられない体験です。ヘリの荷揚げの撮影では、実は3回ほど山頂でスタンバイしましたが、残念ながらガスの影響でヘリが飛ばず、僕は撮影ができませんでした。結局、荷揚げの映像は後日、小屋のスタッフがスマートフォンで撮ってくれたものです。僕は朝4時に電話で設定を伝えただけ。まさに一発勝負の緊張感の中、完璧に撮ってくれた彼らの対応力と技術には大変驚かされました。
まさに小屋番という仕事の凄み、ユーティリティさ(万能さ)が表れた場面だったと思います。
山岳写真家・菊池哲男氏とのコラボレーションについて
映画制作にあたって菊池先生にぜひ出演してもらいたいと思った理由は、先生が撮り続けてこられた八ヶ岳の写真の数々には、その一瞬の自然現象を切り取った美しい世界観を持ち、静止画でありながら映像に勝る強い力があり、作品の「核」になると感じていたからです。
また、八ヶ岳のすべてを知り尽くした先生がチームに加わってくださることは、計り知れない力になると確信していました。特に印象深いのは、権現岳から赤岳を狙ったシーンです。ガスで山が見えず、撮影を諦めかけた時、先生が『あと数分待てばガスが晴れて青空になるかもしれない』とアドバイスをくださったんです。その言葉を信じて待つと、わずかな時間でしたが奇跡のように素晴らしい風景が現れました。こうした場面は撮影中何回もありました。
菊池先生の長年の経験に裏打ちされた判断がなければ、この映画の”美しい瞬間”を映像に収めることは決してできなかったでしょう。


監督が感じる八ヶ岳の魅力は
八ヶ岳の魅力は、さまざまな要素が「ギュッと詰まっている」ことです。
まず東京から近くアクセスがよい。それに山の表情も豊かで、南八ヶ岳は北アルプスのようにダイナミック、北八ヶ岳は苔の森が美しく、初心者にも優しいんです。
でも一番の魅力は「人」です。小屋番さんたちとの交流ですね。みなさん個性的ですが、いい人たちばかりです。山小屋に行くと「おかえり」と言って迎えてくれる、都会にはない温もりがあります。
また、彼らは嘘をつかない。命に携わる仕事だから、相手と真剣に向き合ってくれる。そのコミュニケーションが本当に気持ちいい。
「山」「景色」「人」すべてが詰まっているのが八ヶ岳の本当にいいところですよね。

全国公開に向けて、監督からのメッセージ
この映画は山好きの人はもちろん、そうでない方にとっても癒しや楽しさを感じていただける作品になっています。
2026年1月9日(金)からの全国公開をきっかけに、八ヶ岳を訪れる人が増え、山小屋の宿泊客が増加し、八ヶ岳や周辺地域がさらに盛り上がっていくことを願っています。

人生の休憩所で、本当の自分と出会う。
『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』


『小屋番 八ヶ岳に生きる 劇場版』
1月9日(金)より、
ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
©TBS
監督・撮影・MA:深澤慎也(TBS ACT)
プロデューサー:永山由紀子
出演:菊池哲男(山岳写真家)
ナレーション:東野幸治 一双麻希
エグゼクティブプロデューサー:津村有紀
総合プロデューサー:須永麻由 小池 博
協力プロデューサー:石山成人 塩沢葉子 和田圭介
進行プロデューサー:鈴木秀明 尾山優恵
製作:TBS 配給:KeyHolder Pictures 宣伝:KICCORIT
2026年/日本/85分/5.1ch/16:9 ©TBS
公式HP:koyaban.com
公式X:@koyaban _movie